科学技術の智プロジェクト総合報告書刊行にあたって

この科学技術の智プロジェクトは、すべての日本人が身に付けてほしい科学・数学・技術に関わる知識・技能・考え方を提案しようという試みである。

このプロジェクトの前に、2005年に「科学技術リテラシー構築のための調査研究」を行い、プロジェクト全体の目標、進め方、組織のあり方などについて十分詰めておいたものの、2006年後半から2008年3月までという約一年半という短期間で、どこまでプロジェクトを進め、その内容を充実させることができるか、については、不安なところが大きかった。しかしながら、プロジェクトに参加した約150名の方々の熱心なご努力により、七つの専門部会の報告がまとまり、さらに総合報告書を研究期間内にまとめることができた。議論を尽くしきれなかった面もあるが、今後は専門部会報告書ならびに総合報告書が広く議論のための「たたき台」となり、改善されていけばよいと考えている。そして、次の段階として、これらの報告書をもとにして、具体的な教材、教育プログラムの開発がなされていくべきである。教育に関して様々な議論がなされている中で、様々な分野の方々を結集して具体的なゴールを明示するという試みはあまりなされてこなかったのではないか、と思う。

この「科学技術の智」の報告書は、現在の学問の枠組みをそのまま教育の場に移すことを目的とした解説書ではなく、むしろ、今これから育っていく世代がすべて成人となる2030年の日本のあるべき姿を想起し、すべての人々が様々な職種、年齢などの相違を超えて協働して、世界的な課題に取り組み、心豊かで健康的な社会を作っていくために、いかなる智慧が共有されていなければならないかという壮大な問いかけに応えようとするものである。

そのための作業として、まず私たちが直面している、あるいは、するであろう課題にチャレンジするために連携すべき科学技術の領域を七つに設定して議論してまとめたのが「専門部会報告書」である。この分け方は一応の分け方であって、人類の智として深くつながっている。したがって、それらを総合したものが「総合報告書」である。それぞれの専門部会には、それぞれの分野の専門家だけでなく、ひろく教育関係者あるいはメディア関係者なども参加しており、また、専門部会間で相互に専門部会報告書の閲読を行い、共通認識を図るように努めた。総合報告書作成においては、さらに広い分野の方々が関わって全体での議論によって内容を詰めるという作業を繰り返し行った。すなわち、専門部会報告書ならびに総合報告書をまとめる作業自体が、様々な職種を超えて協働する作業であったのである。

本報告書が専門部会報告書とともに、広く人々の手に届き、日本の次世代育成、さらに、将来の社会のデザインのための具体的な活動に資することを願うものである。

平成20年(2008年)3月

北原 和夫

(科学技術の智プロジェクト研究代表者)

 


本報告書につきまして、字句の訂正、図版の追加、巻末の索引の訂正などを行いました。

2010年8月